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高森明勅
2018.6.11 07:00政治

自衛隊「明記」加憲論の思想的源流

 
昨年5月3日の憲法記念日に安倍首相は
突如、自衛隊「明記」の加憲案をぶち上げた。
 
これは民間人のブレーンの助言によると言う。
 
その思想的なルーツを探ると、
日本政策研究センター発行の月刊誌
『明日への選択』平成13年1月号に掲載された
「『改憲』への道をいかに構想するか」という論文
(伊藤哲夫氏執筆)に行き当たる。
 
この論文では明確に「二段階改憲」が「提唱」されている。
 
以下の通り。
 
「憲法を改正するとは、要するにこの国のあり方を、
その『思想と構造』にまで踏み込んで正す――
ということである。
ということは、この部分に触れることのない変革は、
少なくともわれわれの定義では憲法改正ではない
ということでもある。
それは現憲法の補強であり、再編でしかない。
それに陥らないためには、
根本的な『国民精神運動(「この国に揺るがぬ
『国家意志』を取り戻すための運動」など―引用者)
が必要なのである」
 
「だからといって精神運動だけやっていればよい、
というのではない。
国際政治はこの国民精神運動をいつまでも
待ってはくれまい。
…とすれば弥縫(びほう)策ではあっても、
第9条についてはとりあえず部分的改正を
めざすのが道なのではないか。
これはわが国が、とりあえず『普通の国』になっていく
ための第1歩であることは間違いないし、
これは憲法の『思想と構造』に切り込む
最も端的な突破口であることも疑いのないことだから
である」
 
「とりあえず短期・長期二段階の戦略が
必要に思われてならないのである」と。
 
「とりあえず」の繰り返しが気になり、
また「部分改正」の中身が問われるものの、
これはこれで紛れもなく真摯な問題提起だろう。
 
ところが、安倍首相が目指す加憲はこうだ。
 
「自衛隊は合憲なのだからそれに合わせて
憲法の条文を変えよう」
 
「改正したからといって、
別に自衛隊の権限が広がるわけではありません」
 
「二段階論はとりません」
 
「2項維持の自衛隊明記だけにしておくと、
憲法改正のマグマが減ってしまって何十年先まで
2項削除ができなくなってしまうのではないかと
心配する方もいますけれど、どうすれば次の改正が
早いかなんて神様でもない限り分かりません」
(自民党憲法改正推進本部特別顧問、高村正彦氏)
 
先の提起とは全く異質。
 
似て非なる内容だ。
 
ならば、真面目な改憲派なら
 
「少なくともわれわれの定義では憲法改正ではない」
「現憲法の補強であり、再編でしかない」
 
と批判すべきではないか。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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